2015/01/29

2015.1.28 12:00 産経新聞転載 【本紙前ソウル支局長公判】1

http://www.sankei.com/ 転載

法廷に響く「チョッパリセッキ(日本人野郎)!」法廷に響く怒号 反日団体の騒動で公判が何度も中断 第3回公判詳報(1)

韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領と元側近、鄭(チョン)ユンフェ氏が会っていたとの噂をコラムで取り上げ、名誉毀損(きそん)で在宅起訴された産経新聞の加藤達也前ソウル支局長の第3回公判が19日、ソウル中央地裁で開かれた。加藤前支局長を告発した右翼団体「独島(竹島の韓国名)を愛する会」のキル・ジョンソン理事長のほか、鄭氏が検察側証人として出廷し、証人尋問が行われた。公判の詳報を伝える。(ソウル支局)


 《19日午後2時、開廷》
 裁判長「裁判開始に当たって事前に数点お話があります。前回の期日の際にも何度か話しましたが、法廷の中でも外でも、被告人とその他、同事件の関係者に対して騒乱などが起こらないようにお願いします」

 《証人の宣誓後、検察側によるキル・ジョンソン氏への証人尋問開始》

 検察「証人は社団法人領土守護独島を愛する会の理事長ですか」

 証人「はい、そうです」

 検察「社団法人領土守護独島を愛する会は何をしている団体なのか説明してください」

証人「社団法人領土守護独島を愛する会は2002年に設立された純粋な愛国市民団体です」

 検察「どんな活動をしていますか」

 証人「独島を守るための教育や広報、独島を正しく知るための事業、活動をしています」

 検察「証人は被告人を名誉毀損で告発したことがありますか」

 証人「はい。あります」

 検察「どんな内容で告発しましたか」

 証人「大韓民国の国家元首に対する国格を冒涜(ぼうとく)し、国民の間に混乱と不和をもたらしたことで告発しました」

 検察「証人は被告人の作成した『朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?』という記事を読みましたか」

 証人「はい。読みました」

 検察「どのような経緯で、その記事を読むに至りましたか」

 証人「私は独島関連で活動をしている団体のメンバーです。普段から日本で発表される報道については関心を持っています。日本のメディアが日本軍慰安婦の被害者のおばあさんら歴史歪曲(わいきょく)、独島侵奪に関する内容を見ていたときに見つけて読むことになりました」

検察「証人は日本語ができますか」

 証人「いいえ、できません」

 検察「では被告人の記事の内容を何の資料で読むことになったのでしょうか」

 証人「ニュースプロの翻訳バージョンを読みました」

 検察「記事の内容を読んでどのような印象を受けましたか」

 証人「怒りを感じました。大韓民国の国民であればあの記事を読んで、黙っていること自体が私は変だと思いました」

 検察「証人の告発内容を見れば、記事の内容が虚偽事実であり、それにより朴大統領の名誉が毀損されたという趣旨で告発したんですよね」

 証人「はい」

 検察「記事の内容が虚偽だと主張する内容はなんですか」

 証人「常識外のことです。記事の内容は、自分だけではなく一般常識を持っている人がこの記事の内容を信じるということ自体が、常識外のことだと思います」

 検察「具体的にはどのような点が常識外なんですか」

 証人「男女間の問題を扱っています。そして、セウォル号(旅客船)事故当日にあったことを一般的な世論や言論で扱われていることとは違うと思ったので、大韓民国の国民としてそのような内容は、産経新聞という日本国内でそれなりに影響力のある言論機関が、正確な根拠や事実確認なしに、チラシ(情報誌)以下の内容を扱った、その様な点です」

検察「被告人の報道行為が罪として成立するには、被告人が誹謗(ひぼう)する目的で記事を報道したものでなければならないのです。証人は被告人に誹謗する目的を持っていたと思いますか」

 証人「大韓民国の国格を損ない、国民間の混乱を引き起こしたことが誹謗でなければ何なのでしょうか」

 検察「《証人作成の告発状を見せながら》これは証人が作成して提出した告発状ですか。内容を確認してください。証人の署名がありますね。間違いないですか」

 証人「はい、そうです」

 《弁護人によるキル・ジョンソン氏への反対尋問開始》

 弁護人「証人は政党活動をしていたり、していたことがありますか」

 証人「していたことはありますが、今はしていません」

 弁護人「したことがあるということですが、どの政党活動をしたのですか」

 証人「当時のセヌリ党(ハンナラ党)の活動をしていました」

 弁護人「証人がハンナラ党の高陽市市議会議員として活動をしていたという報道を目にしたのですが、正しいですか」

 証人「はい。そうです」

弁護人「証人はニュースプロで翻訳文を読んだといいましたが、ニュースプロで記事が作成されていなかったら、被告人の記事を読むことはできませんでしたか」

 証人「内容に関してですか」

 弁護人「再度質問します。証人は日本語ができないと言っているので、ニュースプロで翻訳が作成されなければ、被告人が作成した記事を読むことができなかったというわけですか」

 証人「記事はニュースプロで読みましたが、産経新聞の報道の報道内容については、聞いたことがありました」

 弁護人「ニュースプロの記事を読んで被告人が日本語で書いた記事を検索したことがありますか」

 証人「私は日本語が分からないので、ニュースプロの翻訳文を読みました」

 弁護人「では証人はニュースプロの翻訳された記事を読んだのですね」

 証人「ニュースプロの翻訳された記事と周りから聞いた話です」

 弁護人「証人はニュースプロの記事を読んで被告人の作成した記事についてよくない印象を持ったということですか」

 証人「冒頭でお話したように、産経新聞は慰安婦の被害者のおばあさんらに対する名誉を毀損し、歴史を歪曲し、そして独島侵奪に関する内容も日本政府の言葉を引用して記事化してきたため、そのように思いました」

弁護人「証人はニュースプロの関係者らについても告発しましたね」

 証人「はい」

 弁護人「現在、ニュースプロの関係者らに関する捜査状況や結果の通告を受けた事実がありますか」

 証人「通告を受けてません」

 弁護人「証人は個人的に朴槿恵大統領を知っていますか」

 証人「大韓民国の国民が大統領を知らないことがありますか」

 弁護人「個人的な親交があるのですか」

 証人「個人的な親交は一切ありません」

 弁護人「証人は個人的に鄭ユンフェ氏を知っていますか。個人的な親交がありますか」

 証人「私は、鄭ユンフェをメディアで知りました。個人的には全く知りません」

 弁護人「この事件の被害者は、朴槿恵大統領と鄭ユンフェです。証人は被害者らと一切関係のないのに告発をしたのですか」

 証人「はい、そうです」

 弁護人「被害者らと一切の関係がないのに告発した理由はなんですか」

 証人「大韓民国の国民だからです」

弁護人「証人は、被告人の作成した記事のうち、具体的にどの部分が被害者、朴槿恵大統領の名誉を毀損したと考え告発したのですか」

 証人「内容を一つ一つ覚えていませんが、持っている資料にあると思います。私よりよくご存知なのではないですか」

 弁護人「被告人の作成した記事を提示します。証人の読んだ記事はこの翻訳記事ですか」

 証人「私の持っている資料と同じだと思います」

 弁護人「その持っている記事のうちどの部分が、被害者、朴槿恵大統領の名誉を毀損したと思うのか示してくれますか」

 証人「内容を一つ一つ読んで探さなければならない状況です。包括的に私は先ほど話したとおり、内容の中にある大統領の国格を見下し、国民を憤慨させる内容だったからです」

 弁護人「では、そのように国格を損なわせる理由が明らかにあるはずです。3ページほどです」

 証人「1カ月程時間がたっているので、探してみていいですか。『パク大統領と男性に関する話だ』『人物は当時、妻帯者』『男女関係にかかわることだ』このような記事が、大韓民国の国民が読んで怒りを覚えない人がいますか。証拠で採択されていると思うので読んでみてください」

弁護人「証人は、崔普植記者の作成した『大統領をめぐるうわさ』という2014年7月18日付けの朝鮮日報記事を読みましたか」

 証人「はい。読みました」

 弁護人「朝鮮日報の記事を提示します。被告人の作成した記事の中に証人が名誉毀損だと示した朴大統領の男女関係の部分だと思いますが、朝鮮日報の記事に『大統領は当日某所で秘線(秘密裏に接触している人)と共にいた。その人物は噂の鄭ユンフェ氏』と、明確にあるのですが、朝鮮日報の記者を告発しない理由はなんですか」

 証人「国内メディアと比較する必要はないと思います。家庭内の問題に該当すると思います。同じ問題でも、告発する当事者がA、Bだけを告発してCは告発しないということもあり得ます。内容が似ているといっても、朝鮮日報は私の判断では、国内問題で、いわば夫婦喧嘩のようなもの。家庭内の問題に隣人にああだこうだ言われる筋合いはないと思う」

 弁護人「朝鮮日報のコラムの内容も朴槿恵大統領に関する男性問題のようなものがあることはあるが、それは日本の新聞とは次元の違うものなので告発する必要がないということですか」

証人「はい。国内問題ですので、国内問題は国内で解決できるものです。事実関係も簡単に確認できます。外国メディアは違う。外国メディアは記事を作成して、当事者が本国に帰国してしまえば終わりです。そしてメディアというものは、正しいことを伝えるべきものなのに、それが証券街のチラシ等の内容を伝えると誰がメディアを信じるでしょうか。傍聴席にも多くのメディア関係者がいらっしゃると思いますが、メディアは正当な国民の権利と事件を掲載してこそメディアであると思う」

 弁護人「証人は朴槿恵大統領が2014年4月16日、セウォル号沈没事故当時、どこで何をしていたか知っていますか」

 証人「一般国民が知りえないと思いますが。一般的な考えでは、大統領府の中で執務をしていたと思う」

 弁護人「証人は、鄭ユンフェが2014年4月16日、セウォル号沈没事故当時、どこで何をしていたか知っていますか」

 証人「知り得ません」

 弁護人「証人は、被告人が記事を作成したときにどのような事実を確認して記事を書いたかを知っていますか」

 証人「先ほど話しましたが証券街のチラシや噂をもとに作成したと思います」

 弁護人「証人が作成した告発状を提示します。証人は告発状で被告人の作成した記事の内容を『韓国の大統領がセウォル号の事故が発生した当日、大統領と鄭ユンフェが互いに緊密な男女関係である点』などに要約したのですが、正しいですか」

 証人「はい、そうです」

 弁護人「証人以外の他の告発人らも、被告人の記事の内容をそれと同じように要約しており、その他にも使用している文章や単語も相当部分が同一です。証人と張ギジョン氏の作成した告発状はほぼ同一です。証人が提出した告発状は証人が自ら作成したのですか」

 証人「はい。私が作成しました」

 弁護人「選挙の際に、大統領や著名政治家に対する虚偽事実を流布するケースや、今回の事件のように被害者と関係のない人が告発する際には、特定の官辺団体から告発状を検察庁に提出するといいます。証人にこの資料を渡してきた人物がいますか」

 証人「いません」

 弁護人「告発状を作成する時に、誰かと相談して作成したのではないですか」

 証人「作成、告発したときに話し合った人はいます」

 弁護人「誰ですか」

 証人「独島を愛する会の役員らです」

 検察「弁護人が、被告人の作成した記事と朝鮮日報の作成した記事を比較して、それを同じ話でも国内メディアと国外メディアは違う、朝鮮日報の記事の内容や表現ではなく、全般的な趣旨と被告人が作成した記事の全般的な趣旨が同一だと考えているのですか」

 証人「似ていると思います。私の判断では、朝鮮日報は、国を国民と共に心配するニュアンスだと思います。産経新聞はそのような内容ではありませんでした」

 検察「告発状を見ると、被告人の記事の内容は、『大統領がセウォル号の事故が発生した当日、大統領と鄭ユンフェが互いに緊密な男女関係だった』となっているが、男女関係で報道した事自体が国家を冒涜したと考えているのですか」

 証人「そうです。大統領は未婚です。そして見方によってはその部分はほかのところまで影響を与えうる部分だと思います」

 裁判長「傍聴席で何の話をしているのですか。後ろで話をするなどの行為は裁判の妨げとなりえますので、お控えください。続けてください」

 検察「弁護人の質問に対する回答の趣旨は、セウォル号事故発生当日、大統領と鄭ユンフェ氏が具体的に何をしていたのかは知りませんがこの状況を男女関係と表現したことは間違っているということですよね」

証人「はい。そうです。国民に混乱を巻き起こしました。このように表現するのはどうかと思いますが、万一、韓国メディアが日本の総理が若い女性と援助交際をしているというニュアンスの記事を書けば、日本人は黙っているでしょうか」

 弁護人「証人は崔普植記者が書いた記事と被告人の書いた記事を読んで、被告人だけを告発した理由は崔普植は韓国人で、被告人は日本人だという民族的な先入観があったからですか」

 証人「先ほど話したとおりです。同じケースのA、B、Cというものがあっても、当事者がA、Bだけを告発してCは告発しないケースがあるように、私の判断では朝鮮日報の崔普植記者の記事は現政界を憂慮して、国を心配し、そんな事が起こってはならないという意図だと考え、産経新聞は常に慰安婦被害者のおばあさんを見下しているようですし、独島侵奪計画についても日本政府と手を組んでいるような内容の記事を書いているメディアです。それを信じられるでしょうか」

 弁護人「証人の持っていた産経新聞の印象が被告人を告発するのに大きな影響を与えたということは事実ですね」

 証人「ないとはいえません。独島や慰安婦被害者のおばあさんの関しても、産経新聞は正しいメディアではないと思います」

 弁護人「大統領に対する報道が、若い子と交際をするといったようなものではなく、未婚の大統領と離婚した男性の男女関係と見ることができますよね」

証人「そうです」

 弁護人「未婚の大統領と成人の男性の男女関係を報道すること自体が大統領に対する名誉毀損とはいえないと思いますが」

 証人「一般市民にそのような事が起これば記事化されて内容が発表されるでしょうか。大韓民国の大統領なのにチラシの内容をもって混乱させるのは名誉毀損だと思います。その報道の内容で、当事者やその周辺の人物が傷ついたとなれば名誉毀損だと思います」

 弁護人「一般市民の場合には、問題とならないというのは」

 裁判長「弁護人、証人が大統領の男女関係が既婚だとか未婚だとかその点ではなく、その報道自体が名誉毀損だとしています」

 弁護人「その見解を聞いているのですが」

 裁判長「男女関係の報道自体が名誉毀損だと思って告発したのではないでしょうか」

 証人「はい。そうです」

 弁護人「反対尋問を終えます」

 裁判長「書類は証拠として提出するのですか。要旨はなんですか」

 検察「告発状の要旨は、被告人の記事はセウォル号事故当日に大統領が誰かに会っていたということで、とんでもない虚偽の記事を報道した。大統領と鄭ユンフェが緊密な男女関係であるかのように描いた」

 弁護人「大統領だから問題となり告発したということですよね。個人に対する話ならば問題ではなく、大統領だから…」

 証人「大統領だから…」

 裁判長「傍聴席、誰ですか」

 《傍聴席に座り、ぶつぶつ文句を言いながら公判を不満げに聞いていた年配の男性グループは、「帽子を脱ぐように」「静かにするように」と廷吏から再三注意を受けていた。うち男性1人が突然、挙手して立ち上がる。酒臭く顔が赤いので明らかに酔っている状態だ》

 騒乱者「わたしです」

 裁判長「何の話をしているのですか」

 騒乱者「いま話をしている告発内容に、大韓民国の大統領を冒涜している事を韓国の国民として黙っていられますか。いられませんよね」

 騒乱者の仲間「そうだ。そうだ」

 裁判長「証人の証言に関して言いたいことがあるのですか」

 騒乱者「日本の産経新聞記者の言うことは全部いいわけか。だから法できちんと判断してください。そうすれば、国民が検察庁も守るだろう。われわれは『オボイ連合』から来ました。こいつの言ってることはすべていいわけか。日本の野郎は…」

 《「オボイ連合」は保守系の反日団体で、産経新聞ソウル支局が入るビル前で、糞尿を投げつけるなどして本紙への抗議デモを行っていた団体。オボイとは父母の意味。団体の所属メンバーは年配者が多い》

 騒乱者の仲間「チョッパリセッキ(日本人野郎)らが」

 《チョッパリとは動物の蹄の意味。日本人が身につける下駄の鼻緒や足袋が2つに分かれている様子を動物になぞらえ、朝鮮半島では日本人を最も卑下する蔑称として使われている。セッキは元々動物の仔や雛を指すが、蔑称としても使われており、チョッパリセッキは日本人に対する“最大級”の蔑称》

 裁判長「席に着いてください」

 騒乱者「大韓民国の国民としてこの件には本当に怒りを感じます。裁判長も大韓民国の人ですよね」

 裁判長「言わんとしていることはわかりましたから、裁判を静かに見ていていてください」
 
《「オボイ連合」のメンバーは一旦席に着き、仲間らと興奮覚めやらぬ様子でぶつぶつ言いながら公判を見守る》

 裁判長「証人、他に何か言いたいことはありますか」

 証人「われわれ領土守護独島を愛する会は、政府から何ひとつも支援を受けていない純粋な市民団体です。私は13年間私費で運営して、独島守護運動をしてきました。我々は官製団体ではありません。官製団体なら政府から支援を受けているはずです。何も支援を受けていません。2002年に団体を作って現在まで運営しています。そして産経新聞とはこのように話をする機会がありませんでしたので、今回ひと言言いたいと思います。産経新聞は日本政府の言いなりにならず、慰安婦被害者の問題や独島の問題を言論人の視点で正しく歴史歪曲をせずに報道してください」

 《弁護人側から提出された意見書について、裁判長と弁護人や検察とのやりとりが行われている最中、「オボイ連合」のメンバーらが「ここは大韓民国だ」「チョッパリセッキ」などと再び騒ぎ出し、しばらくすると興奮した1人が傍聴席前列に進み出て騒ぎ出す》

 裁判長「誰ですか」

 《傍聴席に座っていたほかのメンバーが突然立ち上がり、意味不明なことを叫び出す》

 騒乱者「わたしがひと言言います。日本の奴は…我々…我々の国…だまれ!冒涜した。ひと言言ってから出る」

 裁判長「退廷を命じます」


-詳報(2)に続く